川の道2012(前半ハーフ)

川の道を知ったのは5年ほど前。そのころ僕は、ようやく100kmマラソンを完走できるようになっていた。100km走ってボロボロなのに520km走るとはどういうことか?全く未知の世界で、どうしたらそんなに長く走れるのか謎だった。でもいつかは走りたい、走れるようになりたいと思った。完走者が何人もいるのであれば、自分にもできるはず。焦らずにコツコツと進めてきた。
それから、数年を経て次第に長く走れるようになり、コツもわかってきた。
今回265kmを走って思ったのは、100kmと200kmを越える大会は全然別物だなということ。装備や補給、休憩の仕方など100kmにはないサヴァイバルテクニックが必要である(大げさかw)。
今回の目標は完走。250kmの何たるかを知ること。5月中旬にはUTMFもあるので故障するような無理はしない。できれば余力を残してゴールできることを目標としていた。(でないとフルなんて完走できない)順位は気にしない気楽な旅である。

コースは、葛西臨海公園からサイクリングロード沿いに荒川を登り、三国峠を越えて信濃川を新潟まで行く。このコースは、10年ほどまえに自転車で走ったことがあった。その時は、東京を午後に出て熊谷で1泊、秩父で1泊、日本海が見えたのは3日目の夕方だった。まさかあのコースを走ることになるとは。いくつかの風景は当時のままであり、10年ほど前の記憶をチラチラ思い出す旅でもあった。

4月30日9時に葛西臨海公園をスタート。和やかに走り出す。先は長いのだ誰も急ぎはしない。天気は曇り、風は少なく蒸し暑い。チームのSさんと話しながら進む。Sさんは1週間前にさくら道を走ったばかり。そして、川の道フルに参加。このあとUTMF。連戦で少し疲れているようだ。どうやって疲労回復しているのかいろいろと聞いたが、秘密は何も無かった。。単に強いのである。

Sさんと別れて一人旅。見慣れた荒川のサイクリングロードを淡々と進む。河川敷では野球やサッカーをやってて賑やか、ビールを飲んでいる人もいる。しかし飽きる、眺めが変わらないこのコース。
いくつかの私設エイドがありドリンク、軽食をいただき助かった。すでに先頭は見えなくなっていた。

川を渡ってCP1戸田市彩湖畔(35.7km)13:31着。ここはトライアスロンを毎年8月に開催している。日本で一番暑い大会と言われている。何回か参加しており懐かしい。汗が大量に出ていたのでエイドで水分を多めに補給し出発。
日陰の無い道が続き暑い。途中の私設エイドでオレンジ、バナナ、ビールをいただく。美味い!広々とした運動広場の横を過ぎる。ここで10年以上前に野球試合をしたことがあった。負けたなあと思い出す。

線路を越えてしばらくいくと大きな橋のたもとにCP2(49.6km)15:26着。まだまだ暑い。Dさんがエイドにいて応援していた。軽食をいただいて直ぐに出る。この先、河川敷は農地が多くなり人もまばら。大きな橋の真ん中にある川中道へ降りてサイクリングロードを登っていく。田畑が見渡す限り広がっている。60kmぐらいに私設エイドがあり、軽食とビールを一口いただく美味い!その後、小江戸大江戸フットレースのコースに入る。川越近辺まで来た。

CP3(65.6km)桜堤公園入口17:40着。コーラ、そば、うどん、おにぎり、オレンジ、バナナなどなど大量に補給して、ストレッチしてエイドを出る。日も翳りようやく涼しくなってきたので走りやすい。小雨が降ったようで道が濡れている。暗くなってきたのでライトを点灯する。犬の散歩をしている人と話をして、がんばってと励まされる。

CP4(74.5km)大芦橋18:50着。日は落ちて暗い。ここのエイドではカップ麺があった。みそ、しょうゆ、とんこつ、うどんと種類が豊富だ。おにぎりもいただいてかなり元気になる。橋を渡りサイクリングロードとはおさらば。熊谷の街中に入る。交通量が多いので車に注意しながら進む。途中、何してるのかと聞かれ説明する。頑張ってください!と励まされる。途中コンビニで補給。

CP5(86.7km)熊谷警察署前交差点20:58 ここからのCPは無人。エイドも無い。補給はコンビニがメインになる。分岐に人も居ないので間違わないようにチェックしながら進む。前方にランナーらしき明かりが見えると安堵する。街灯が少ないところもあり足元へ注意が必要。手入れされていない歩道は根が盛上がり躓きやすい。途中、山田うどんでカレーとうどんセットを食べる。暑さにやられているのかうどんを残してしまう。食べると元気になる。今回も多めにカロリーを取ることで筋疲労を少なくする作戦。さらにコンビニで補給し、前後しているランナーと少し話す。

105km地点を過ぎて線路沿いの歩道が無い道に出る。前方から来る車にサインを送りながらしばらく進むとCP6(108.5km)寄居町 波久礼駅前T字路0:49着。
ここには私設エイドがあり、マーボ丼、カレーうどんを出してくれた。ありがたい。足に熱を持ち始めていたので、靴下を脱いでリラックスする。気持ちいい。この先からいよいよ登りが始まる。
今回から新しく設定された道路は意外にも整備された道で走りやすかった。この区間は東京から参加されている方と10kmほど並走する。その方は100kmオーバーは初めてと言っていたが僕より快調そうだ。でも、固形物が食べられないらしく不安そうだ。コンビニで補給。おにぎり、焼きビーフン、レッドブル。食い合わせが悪かったのか、この後しばらく苦しくて走れなくなる。並走していた方も先に行ってしまった。高度も上がってきて少し肌寒い。コインランドリーで寝ている人がいる。僕も眠かった。
秩父に入り夜が明けてきた。4時過ぎ。おもむろに道端に横になり目を閉じてみる。ひんやりしていて気持ちいい。近くをランナーが通るが、皆そっとしておいてくれる。でも眠れない。しばらくして起き上がり足をマッサージしてからゆっくり進む。

CP7(129.8km)秩父上野町交差点4:58通過。町はまだ静かだ。天気が良ければ武甲山など見えるはずだがあいにくの天気。眺めは良くない。この先、しばらく行くとコンビニが無くなる。こまどり荘までの35kmはエイドも無いので食料を買い込んでおく。幸い自販機はたくさんあったので水に困ることは無いが、燃費のよくない自分には辛い区間である。おにぎり、パンを詰めて出発した。
ふと、見覚えのある踏み切りに出た。昔、自転車で通った時のままの景色だった。昔の記憶がフラッシュバックして目が覚めた。当時この辺りの宿に泊まったのだ。あのときは予約もなく何軒か尋ねて回って、小さな観光案内で1箇所だけ泊めてくれるところを見つけた。あれから10数年後、僕はどういうわけだか道端でも寝れるようになった。あのころより強くなったようだ。

さらに進むと歩道が無くなった。ルールとして歩道のない道は右端を進むことになっている。GWの朝なので車は少ないが、それでもトラックがぎりぎりを通り過ぎる。車も多く下りでスピードが出ている。ブラインドコーナーは特に危なく身の危険を感じた。
登りが険しくなり歩きになる。10kmほど進むとループ橋が見えてくる。ここには歩道があり、整備されているが、高さが有りで下を除くと尻がムズムズする。
しばらく行くとこまどり荘の看板が見えた。夢にまで見たこまどり荘。すでに24時間経過していて眠気もピーク。あそこまで行けば仮眠ができるのだと元気になる。このあたりでスイカを無くしたことに気がつく。残金2000円程度だったがもったいないので嫁さんにメールして紛失申請してもらう。

CP8(159km)分岐10:40通過。足に熱を帯びているので靴を脱いでマッサージする。トンネルに入ると暗くて眠気でフラフラと危ない。しばし休憩をいれながら進む。福岡から参加されているランナーと話をし、気を紛らわせていただいた。そしてようやくこまどり荘にたどり着いた。

CP9(170.2km)こまどり荘着。ここで2時間休憩がルール。取り急ぎ風呂に入る。他のランナーはバタバタ出て行くが自分はじっくり湯につかり、水で足を冷やす。風呂から上がり、カレーを食べてビールを少し飲んでベットに潜り込んだ。
2時間ほどで目が覚めたが、もう一回寝た。暗くなって起きてみるとかなり元気になっていた。足の熱も引いている。外に出て着替えた。預けておいた大量の食料をザックに詰める。ここを出ると次のコンビニまで何と60km以上も補給箇所が無い。スタッフに出発することを伝えて19:45に出発。約6時間の休憩。
三国峠に向かう林道に入る。星は無く漆黒の闇。ガレ道。長野県側に行くと舗装されているらしい。元気になっていたので走って進んだ。実に気持ちいい。しばらく行くと鹿がいた。メスだ。驚いたのか慌てて崖を降りていった。途中で小雨が降ってきたので合羽を着た。何人か追い抜き頂上へ。

CP10(188.5km)三国峠23:44通過。約4時間の登り。頂上付近にいくとライトが明々と照らされていた。感動的である。一人で私設エイドを毎年している写真家だそうだ。頂上付近は風も雨も有り冷えていたので、早々にお礼を言って先を急いだ。
下りになってライトが暗くなったので電池交換。暗闇の中で電池交換はちょっと大変。下りてくると雨風は止んでいた。振り返ると降りて来るライトがポツポツ見える。山郷に下りてホッと安心。猪を追い払うためか銃声もどきが山々に立て続けに響いて何とも恐ろしい一帯を抜ける。3時すぎに眠くなり、路線バスの駅で横になるも寒くて眠れなかった。そのままフラフラ進むが、少しでも暖かいところで横になろうと駅に行くと、先客ランナーが3人寝ていた。自分はベンチに座って寝てみた。その後もう一人ランナーが来た。ここはそういう場所らしい。風が無いだけ随分ありがたい。そこで1時間ほどゴロゴロした。すこしウトウトするも寒くて眠れない。暖かい缶コーヒーを2本飲んでパンを食べて出発した。明るくなっていた。
山々は雲に覆われて展望はいま一つ。雨が降りそうだ。

しばらく進むと141号を右に曲がる。ここがCP11(218.2km)6:13通過。ここから車量が増える。一部歩道が無いところがあり危険なところも。少し寝たおかげか元気になって再び走れるようになった。
道路工事をしている人に、どこから来たんですか?と聞かれ
東京です
えっ?どこから走ってるんですか?
東京です
ええっ!(アウアウなっている)東京から走ってきたんですか!?どこまで行くんですか?
僕は小諸ですけど、黄色ゼッケンの人は日本海まで行きます。
えー!!凄いですね。何日で?寝るんですか?おお!そうですか!頑張ってください!
ありがとうございます!
といった会話が長野県側でもいくつか発生した。

10kmほど進むとようやくコンビニに到着。8時頃だったか。カップラーメン、おにぎり、そしてビールを流し込んで、すぐに出発した。残すところ35km。日が昇ると暑くなってきた。
141号をひたすら直進する。車両は多く、空気は良くない。退屈なコースである。この日は朝から蒸暑く、汗がたくさんでた。11時半頃ラーメン屋で味噌ラーメン&ごはんサービスを食べた。僕はとても汗臭かっただろうから他とは離れて座った。食事はとても美味しかった。暖かくこってりしたものは元気がでる。満たされると快適に走って進めるようにまで回復した。その後、雨が本格的に降り出しずぶ濡れになった。
コンビニでトイレと補給。レジで大会のことを説明する。もうすぐですね、頑張ってくださいと励まされる。お礼を言って雨の中へ戻る。

雨の中を進むと、ようやくCP12(257km)長土呂東交差点12:53通過。このあたりで、再び疲労が出てきて辛かったが我慢して走った。ちいさなアップダウンが有り、狭い道で車も多い。何故かこの時間帯に小学生が道いっぱいに広がって傘をさして歩いてきた。何してるんですか?走ってる!少し面倒なので、さっとやり過ごした。
地図で曲がる地点を注意深く確認し、ようやくゴールの小諸グランドキャッスルが見えた。最後はきちんと走ってゴール。小雨の中スタッフは合羽を着て外でまっていた。ありがたい。
GOAL(264.7km)14:00着。スタートから53時間経過後のこと。順位は11位。
TOPは前日の夜着らしいのでその差は大きい。

風呂で汗を流し、水風呂でアイシングした。足の状態をチェックしたが肉刺はなかった。履きつぶしたアシックスのランシューズは、よく足に馴染んで心地よかった。この靴、ソールはすでに限界まで磨り減っていて、底に穴が空くかと心配だった。これで走り納めである。お疲れ様でした。
風呂には、他のランナーに混じって一般の人もいる。どれがランナーでどれが普通の人か、何故か見分けができなかった。そういう人も、このウルトラ大会を走っていた。足がもりもりしている、腹が引っ込んでいるからランナーと言う訳ではないのだ。ある程度脂肪があったほうがウルトラには良いのかも知れないとさえ思ったほど。見たところムホマッチョな人は少ない。
だらだらと風呂から上がり、ビールを飲んで帰りのバスを予約した。フルの人はここが中間地点。雨の中へ出て行く人も。ガンバレ!
何人かと挨拶し、スタッフにお礼を言って完走証をもらってホテルを出た。
小諸といえば蕎麦。駅前の蕎麦屋に入り蕎麦定食とビールを頼んだ。蕎麦はいま一つだがビールは美味しかった。さらにビールと柿の種を買い込んで、バスに乗り込んで新宿に向かった。3時間で到着、バスの速さに驚いた。

3日後にはラン練を再開できたので疲労は浅かった。この調子で行けば来年はフル完走できるはず。

250kmの長丁場、どこで何を補給して、どこで休むのか、自分の状態はどうかの見極めが大切である。特に睡魔はやっかいで危ない。
眠くなったら寝るのがいいと教わった。場所はどこでもいいんだと。資材置き場の隅で袋のようなものに包まって寝ている人がいた。エマージェンシーシートで作ったの袋らしい。百均にあるものを加工して作っているとのこと。汗でベタベタになるが寒いよりましだそうだ。包まっている様子はちょっと異様な光景だが。。
また、エイドであんまり食べない人や、糖分よりも水、お茶を好んで補給している人もいた。食料の備蓄を忘れてて補給無しで60km歩いている人もいた。無謀というか根性というか。。

その後、フル後半は雨の日が続いて大変だったようだ。それでも高い完走率。あきらめるなんて知らない人達。なんでそこまで走るのかわからないけど、川の道にはタフな人が多いことだけは間違いない。